「跳びはねる思考ー会話のできない自閉症の僕が考えていることー」東田直樹 著 に私は救われた

この本の著者は1992年生まれの、会話のできない重度の自閉症者だ。

本のカバーに書かれた著者の紹介文には「13歳の時に執筆した「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」(エスコアール)において、理解されにくかった自閉症者の内面を平易な言葉で伝え、注目を浴びる。各国で翻訳され、異例のベストセラーになっている。」という一文がある。確かに、自閉症独特の感性があるが、自分もずっと前にそんなだったと懐かしい気持ちにさせてくれる内容も多かった。

本文より抜粋「頭をからっぽにした時、僕の目に映るものは、まぶしいお日様と風にそよぐ木々たちです。僕も草になったような錯覚に陥ります。

誰かが僕を呼ぶ声がします。声のする方に振り返った時、自分が人間だったことを思い出すのです。」

幼いころに、こんな体験をしたことは誰しもあるのではないだろうか。鏡を見て自分の目の瞳に、小さい小さい自分が写っていることを、もう一つの世界があるように感じたり、水を触っていると気持ち良くて、なぜか安心したりするのは、普通に大人になった人も感覚として共有していると思う。ただ、彼の場合は根源的に考えを詰めていく。

鏡の中の瞳の中にいる自分がどうしているか探さずにはいられなかったり、心から水を恋しがったりするらしい。

本文より抜粋「水を触っていると『だいじょうぶだよ』という地球からのメッセージが聞こえてくる気がするのです。誰にも気持ちをわかってもらえなくても、地球が僕の思いを受け止めてくれるような安心感を与えてくれます。」

 

日常生活にも援助がいる彼の、自分の存在に対する問いかけや、人に理解されない悲しみや、自分で物事の判断ができない不安などを抱えて生きていく中で、彼が懸命に求めているものは何か。それに触れたとき、私の心は浄化されて透明になった気がした。

正直ばかりでは生きてこなかった私は、この本で救われた思いがしたのだった。

 

水の中では自由になれます。」