長女の思い

f:id:tanpopo-keikoniki:20210507160217j:plain関西圏に住んでいた夫の姉が、長女の住む関東の老人ホームに入所したと聞いた。義姉は92歳になったが、5年前まではデイサービスを利用しながら自宅で一人暮らしをしていた。

しかし、失火で家を失い、しばらく隣の市に住む長男家族と同居したあと、地元の老人ホームに入所していた。

弟である私の夫とは一回り歳が離れているので、親しいお付き合いはしていなかった。だから、どう言う経緯で関東に行くことになったかは私にはわからない。状況から判断して、長女が最後を看取る事になるのだなと思った。

そして、義姉の長女が羨ましいと、そう思ったのだ。出来ることなら私もそうしたいと…
私の母は、実家のある徳島県のケアハウスで生活していたが、今は寝たきりになって入院している。他県に住む私は、コロナ禍で面会は叶わず、もう8ヶ月もの間、直後会うことは出来ないでいる。長引くコロナ禍のなかで同じ状況にある人達はたくさんおられるだろう。みんな、辛い思いを抱えているだろうと思う。

親しい人の、そう長くは無いであろう残された時間を共にしたいという、切実な思いがかなわないのは、胸が苦しくなるほど淋しい。

母は病床でどんな思いで、この日々を過ごしているのだろうと想像してみる。先に逝った父との日々、私達3人の子どもや孫、曾孫のことなどを思い浮かべているだろうか。

何も出来ない自分を不甲斐なく思っていたのだが、急展開したのは病院がオンライン面会を勧めてくれてからだった。最初の時こそ、無反応な母の姿に愕然としたが、回を重ねる毎に母が蘇ってきたのだ。毎週、ほぼ同じ曜日の同じ時間に面会をしてきて、昨日はちょうど10回目のオンライン面会になった。回を重ねるうちに、とうとう母は私や娘の名前を言えるようになり、会話ができ始めたのだ。そして、穏やかな笑顔を見せてくれるようになった。

母が、私達のオンライン面会を心待ちにしてくれている確信がもてて、私もうれしかった。僅か5分という短い時間だけれど、心を通い合わせている実感が、私の心の負い目を和らげてくれる。

苦労の連続の人生を送った母を看取りたい長女としての思いは、現実には叶わぬことだと分かってはいる。

来週は花の好きな母に、バラ園からオンライン面会をしようと思っている。