オンラインで繋ぐ命

f:id:tanpopo-keikoniki:20210417192945j:plain肺炎で入院していた母は、命の危機を乗り越えることができた。しかし、寝たきりで、すでに自分で食べものを飲み込む力を失い、点滴の栄養のみで命を繋いでいる。

何とか母を励ましたくて病院のスタッフに電話で相談をしたら、オンラインでの面会を勧めてくれた。早速、予約をして二人の娘と一緒に緊張してスマホの画面に対った。

画面に写し出されたた母は、ベットに上向きで薄っぺらい体を横たえて微動だにしていない。意識があるようには見えなかった。私は母に聴いて欲しかった歌、庭の千草の曲を歌い始めたものの、涙で歌えなくなってしまった。看護士さんは、気分がいい時は言葉かけに頷くことがあるというが、慰めにしか聞こえなかった。私達は、母の命がそう長くはないと直感したのだった。

そして、オンラインで面会が出来る事を、きょうだいや甥や姪にも急いで知らせた。お別れが近いだろうという一言を付け加えて。
私と娘達は毎週水曜日の4時半と決めて、オンラインの面会を続けることにした。

そして間もなく妹や姪から、母と会話が出来たという報告が入り始め、私達も満開の桜並木を見せてあげた時に初めて母の言葉を聞くことができた。
き…れ…い…

その後は回を重ねる毎に、非常にゆっくりだが話が出来るようになってきた。息子も、おばあちゃんが僕の名前を呼んでくれたと報せてきた。有り難いことに、こうしてオンラインをしてくれる身内が増えてきた。

今週、私達がオンラインで面会した時は、画面に映った母が微笑んでいた。私には、オンラインでの身内とのやり取りを母が楽しみに待っていると思われて嬉しかった。
制限時間は5分という短いやり取りだが、母との時間を大切にしよう。それしか今の私に出来ることはないのだから。

第一回目の時に感じた絶望感が嘘のような母の変わりように、正直言って驚いている。言葉をやりとりし、心を通わすことで母と繋がっていたいと思う。
出来るところまで。