母であり続ける

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寝たきりになり、点滴だけに頼って命を繫いている母と、初めてオンラインで面会をしてから5ヶ月が経過した。初回は画面に映し出された母の姿から、お別れが近いであろうと思ったのだった。

それでも母に会いたくて、ほぼ毎週、同じ曜日の同じ時間にふたりの娘も一緒にオンラインでの面会を重ねてきた。それが功を奏したのか、母が待っていてくれたことが表情から読み取れるようになり、私達も楽しみになってきていた。

そうするうちに、母は私達に話そうとする意欲が湧いてきて、絞り出すような声で私達の名前を呼んでくれた。私達はうれしくてボロボロ涙をこぼしなが拍手をおくったのだ。

その日の体調にもよるが、気分の良い日は一生懸命に話をする母。カメラを操作する看護師さんは、互いの意思疎通が上手くいくように通訳にもなってくれる。その、気配りから母が病院のスタッフに大切にされているらしい空気が伝わってきて、心が安まる。

先週は、私の家庭菜園で甘いプチトマトが実っていると伝えると、来年の為に、その種を収穫しておくようにと教えてくれた。母のレモンの木を接木で育て実のらせた次女の話も嬉しそうに聞き、また挿し木をして備えておくようにと教えた。ああ、母は、いつまでも母であり続けるのだと、胸が熱くなった。

私は、オーナーシェフをしていたカフェを半月前に閉店した。そして、デイサービスで週2回ランチを作るアルバイトを始めている。メニューは任されているので、ふと気が付くと母の好物ばかり作っていて苦笑いすることがある。

遠い地に住むので叶わぬことであったけれど、母に毎日の食事をつくってあげたかった。
その思いを込めて、デイサービスの利用者さんに、美味しく食べていただけるよう努力しようと思う。