胸の中に回るかざぐるま

ここ2週間ほどは、ぎっくり腰やら首の痛みで苦しかった。仕方なく、体調の悪い日はカフェを臨時休業にしていた。やっと、体の動きがスムーズにできるようになって、今朝は出勤の足取りが軽くなったように思われた。

川沿いの桜並木ですれ違った3歳くらいの男の子の笑い声が突然、背後から聞こえてきた。その途端、私の胸の中でかざぐるまがカラカラと音を立てて回り始めたのだ。それは、久しぶりの体験だった。

体調が良く、精神的にも安定しているときに、何かをきっかけにして全身に快感を覚えることがある。例えば温かな春の光を正面から浴びながら歩いているとき、初夏の風に吹かれながら川面のきらめきを眺めているとき、半袖服の脇の下を秋風がスーと通り過ぎていくとき、ああ、なんて気持ちがいいのだろうと思う。

そうすると、胸の中にある小さな風車が、最初はゆっくりゆっくりと、次第に早く回り出す。「何て気持ちがいいんだろう」とつぶやくと、向かい風を受けたように音をたてながら回り出すのだ。「もっと、もっと」とつぶやいてみると、その感覚はしばらく持続する。そして、心地良さが、全身に亘っていくのだった。

今朝は、母親と一緒に登園する幼児の屈託のない笑い声でスイッチが入った。