歯ごたえが違うからおいしい

昨日はお惣菜のテイクアウト用にメンチカツを作った。土曜日だったので男性の好きそうなものをと思ったからだ。魚料理はタラの空揚げと野菜の甘酢あん。五目煮豆と、タコときゅうりの酢の物、オクラと薄アゲの煮びたしのテイクアウトのメニューだった。

メンチカツにはキャベツの千切りを底に敷き、それをクッキングペーパーで覆った上にメンチカツを乗せてパッケージした。揚げ油がキャベツに沁み込まないようにという配慮だった。トマト缶と白ワインを煮込んだソースも添えた。

実は、私は無類の千キャベツ好きなのだ。しゃきしゃきの歯ごたえと、ほんのり甘いキャベツの味がたまらない。レモンを絞って塩をパラパラと降ればいくらでも食べてしまうほどに…。なので、お客様にもできるだけおいしく召し上がっていただきたいと思う。

ずいぶん前のことだが、友人に、知り合いが経営する豚カツ屋さんに連れて行ってもらった時のことだった。こんがりと色よく揚げられた豚カツには何と、薄緑色の千キャベツが山のように盛られていた。その繊細で美しいのに感動してしまったほどだった。手仕事ではなく、きっと機械でカットされたのだろうとすぐにわかったが、キャベツ好きにはたまらない!とばかり、豚カツより先に一つまみのキャベツを頬張ってみた。ん、ん、ん…。おいしくない…。そんなはずはない、これほど細く切りそろったキャベツなんだからと、もう一度食べてみる。しかし、結果は同じだった。

ドレッシングの味で何とか食べ終えたが、このキャベツの味の無さがどうしてなのか、その時はわからなかった。時は冬、キャベツの甘みが増す季節だった。

それ以来、外食しても千キャベツが添えられているメニューは避けるようになっていた。

数年後、NHKテレビの「今日の料理」で土井善晴さんが、キャベツを刻みながら、「太いとこ、細いとこがあって歯ごたえが違うのがおいしさなんです。」と、言っているのを観た。わかった~、そうだったのか!

機械で均一の細さに切られたキャベツには、歯ごたえも均一になって、うまみが半減されているのか~と。すとんと、音を立てて胸のつかえが下りていくように思ったものです。

まず、庖丁を研いでキャベツに向かう私。トントントンと小気味よく千になっていくキャベツは、太いのも、細いのも混ざりあった自慢のものです。おいしく召し上がっていただけたでしょうか?